この記事の要点
- 系統用蓄電池の接続契約申込は2025年9月末で全国(沖縄を除く)約2,400万kW、前年比およそ3.9倍に膨らみ、これが手続き見直しの出発点になった。
- 第一段の「接続検討の件数上限」は2026年8月1日から運用が始まる確定事項で、エリアごとの上限件数(5〜12件)は各一般送配電事業者が算定する。
- 第二段の「契約申込時の用地権原要件」は2026年10月1日の施行が予定される見込み段階で、要件の中身と必要書類は今後の規程・様式改正で固まる。
- 用地権原の確保には、農地法の転用許可(第4条・第5条)、森林法の林地開発許可(太陽光は0.5haを超える、令和5年4月1日以降)、盛土規制法(令和5年5月26日施行)といった土地利用規制をくぐり抜ける時間が前提になる。
- 結果として、用地確保と各種許認可を系統手続きより前倒しで並べ直し、確度の高い案件に資源を集中させる動き方が前提になる。
一文要約
系統用蓄電池の接続検討申込が短期間で前年比およそ3.9倍(2025年9月末で全国・沖縄を除き約2,400万kW)に膨らんだことを受け、系統連系の手続きが二段階で厳しくなる。第一段は接続検討の同時申込件数に上限を置くもので、2026年8月1日から運用が始まる。上限の数字は全国一律ではなく、エリアごとに各一般送配電事業者が算定する。第二段は契約申込の段階で事業用地の権原(土地を使う権利)を確保していることを求める要件で、2026年10月1日の施行が予定されている(現時点では見込み)。実現性の薄い案件がとりあえず系統枠を押さえておく「空押さえ」を、入口とその先の両方で抑えるねらいである。用地の権原を固めるには、農地・森林・造成にかかる許認可を先に通す必要があり、開発の順序そのものが組み替わる。

申込の急増という出発点
系統用蓄電池の系統接続をめぐる申込は、ここ1年ほどで急速に積み上がった。資源エネルギー庁の審議資料によれば、接続契約申込は2025年9月末で全国(沖縄を除く)約2,400万kWに達し、前年と比べておよそ3.9倍になっている(出典:資源エネルギー庁 第7回次世代電力系統ワーキンググループ 資料1-1)。
この急増そのものは、蓄電池が需給調整や卸電力市場で果たす役割への期待の表れでもある。問題はそのスピードと中身にあった。検討申込が一般送配電事業者の処理能力を上回って滞り、事業として実現する見込みの薄い案件までが系統枠を先取りしてしまう状態が生じた。1社が同時に多数の地点で接続検討を出し、結果が出てから絞り込む、という進め方が広がったためである。
蓄電池が需給調整市場や容量市場でどう収益機会を持つかについては、当ブログの容量市場と系統用蓄電池の全体像もあわせて参照されたい。市場側の期待が大きいほど、入口の系統手続きに申込が集中する構図になっている。
「空押さえ」とは何が問題なのか
系統の容量は有限で、ある地点で接続検討や契約申込が入ると、その分の枠が一時的に他の案件に使えなくなる。実現性の高い案件であればそれは正常な手続きだが、確度の低い案件が大量に枠を占めると、本当に建てる事業者の案件が後ろに回されたり、系統増強の要否判断がゆがんだりする。
この、電力を実際に使う見込みが薄いまま系統容量だけを先に押さえる状態が「空押さえ」と呼ばれる。蓄電池の申込が前年比およそ3.9倍に膨らむなかで、空押さえと処理の滞りが同時に顕在化し、手続きそのものを見直す必要が生じた。

二段階で規律を強める設計
今回の見直しは、一つの大きな改正ではなく、手続きの段階ごとに二つの規律を置く形で進む。手続きの入口にあたる「接続検討」の段階と、その先の「契約申込」の段階である。
接続検討は、ある地点に連系した場合の技術的な条件や費用の見通しを確かめる入口の手続きで、ここに同時申込の件数上限が入る(2026年8月1日運用開始)。契約申込は、実際に系統につなぐ契約に向けた申込で、ここに事業用地の権原要件が入る(2026年10月1日施行予定)。入口で並行申込の数を絞り、その先で実現性のしるしを求める、という二段構えになっている。

第一段:接続検討の件数上限(2026年8月1日)
第一段は、1つの事業者が同時に出せる接続検討の受付件数に天井を設けるものである。2026年8月1日から運用が始まる(出典:資源エネルギー庁 第11回次世代電力系統ワーキンググループ 資料2(2026年6月10日, 011_02_00.pdf)。および第10回 2026年4月16日)。エリアごとの上限件数(5〜12件)は第11回 資料2で確定した。
これにより、とりあえず多くの地点で接続検討を並行して申し込み、系統枠を先に確保しておく進め方が取りにくくなる。検討する案件を、事業として進める確度の順にあらかじめ絞り込んでおくことが前提になる。
上限値はエリアごとに算定される
注意したいのは、上限件数が全国で同じ数字に決まるわけではない点である。具体的な上限件数は、各一般送配電事業者がエリア単位で算定して定める。
したがって、ある地域で何件まで同時に出せるかは、その地域を担当する一般送配電事業者の公表値を個別に確認する必要がある。複数のエリアにまたがって案件を持つ事業者ほど、エリアごとに別々の上限を前提に申込計画を組むことになる。なぜエリアで差が出るのかといえば、地域ごとに系統の空き容量も申込の混雑度合いも異なるためで、混雑が激しいエリアほど上限が低く算定されやすいと考えられる(当社による解説)。
第二段:契約申込時の用地権原(2026年10月1日予定)
第二段は、接続検討の先にある契約申込に対する規律である。柱は、契約申込の段階で事業用地の権原(その土地を使う権利)を確保していることを求める要件で、2026年10月1日の施行が予定されている(出典:資源エネルギー庁 第11回次世代電力系統ワーキンググループ 資料2(2026年6月10日, 011_02_00.pdf)。なお背景となる方針は系統アクセス手続きの規律強化について 資料3(2025年12月24日)にも示されている)。
接続検討の件数上限が手続きの入口の規律だとすれば、こちらはその先の段階に置かれた規律である。電力を実際に使う見込みのしるしとして用地の権原を求めることで、用地が固まらないまま系統枠だけを先取りする状態を抑えるねらいがある。
用地の権原とは何を指すのか
ここでいう「権原」とは、その土地で事業を行う法的な根拠、つまり土地を使う権利を指す。典型的には、自社が所有する場合の所有権、地主から借りる場合の賃借権(賃貸借契約)、あるいは地上権・使用貸借といった形が考えられる。蓄電所は数十年単位で稼働する設備のため、短期の口約束ではなく、登記や契約書で裏づけられる安定した権利が求められると整理するのが自然である(当社による解説)。

権原を裏づける書類として何を、いつ提出するのかは、後述する関連規程・申込様式の改正で固まる部分が大きい。現段階では、登記事項証明書や賃貸借契約書といった書類が想定の中心になると見込まれるが、確定情報は改正後の文書での確認が要る。重要なのは、用地の権原は一片の書類ではなく、その背後にある土地利用規制(農地・森林・造成など)を通過して初めて安定する、という点である。
適地確保が難しい理由 — 用地の現実
系統用蓄電池に必要な平坦でまとまった土地は、需要地や系統の空きがある地点ほど取り合いになりやすい。さらに日本では、土地の地目や立地に応じて複数の土地利用規制がかかり、それぞれに許認可の手続きと時間が必要になる。用地の権原を「確保した」と言えるためには、所有権や賃借権を得るだけでなく、その土地で蓄電所を建てられる状態にする規制クリアまで含めて考える必要がある。
代表的なものを整理すると、農地であれば農地法の転用許可、森林であれば森林法の林地開発許可、土地を造成して盛土・切土を行うなら盛土規制法の許可がそれぞれ関わってくる。地目が「宅地」や「雑種地」であっても、市街化調整区域なら都市計画法の開発許可が必要になる場合がある。用地の選定段階で、これらのうちどれが効いてくるかを見極めることが、開発スケジュールの前提になる。

太陽光発電をめぐる土地利用規制の強化の流れは、住民説明会の義務化や廃棄費用の積立など別の論点でも進んでいる。これらの全体像は当ブログの太陽光の規律強化(住民説明会・廃棄費用・リサイクル新法)で扱っており、蓄電池の用地確保にも通じる規制の方向感がつかめる。
農地に建てる場合 — 農地法の転用許可
農地に蓄電所や太陽光を建てる場合、農地を農地以外の用途に変える「農地転用」にあたり、農地法の許可が要る。自分の農地を自分で転用するなら第4条、他人の農地を取得・賃借して転用するなら第5条の許可で、いずれも原則として都道府県知事(一定の市町村では指定市町村長)が許可権者となる(出典:農林水産省 農地転用許可制度について)。
許可されるかどうかは、その農地がどの区分に属するかで大きく変わる。農用地区域内農地(いわゆる青地)や、生産性の高い甲種農地・第1種農地は原則として転用が認められにくく、市街地に近く生産性の低い第3種農地は原則許可される、という考え方が基本である。第2種農地は、他に適地がないかどうか(代替性)で判断される。つまり、よい農地ほど建てにくく、用地候補として現実的なのは農業上の利用価値が低い区分に偏る(当社による解説)。

なお、支柱を立てて営農を続けながら上部空間で発電する「営農型」については、令和6年4月1日に農地法施行規則とガイドラインが整備され、一時転用許可という枠組みで扱われる(出典:農林水産省 再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可)。蓄電所単体ではこの営農型の枠組みには乗りにくいが、太陽光と蓄電池を併設する事業では関係しうる論点である。いずれにせよ、農地区分の確認と農業委員会・都道府県との事前相談は、用地の権原を固める前段として欠かせない。
森林に建てる場合 — 林地開発許可
森林を開発して蓄電所や太陽光を建てる場合は、森林法の林地開発許可(森林法第10条の2)が関わる。地域森林計画の対象となる民有林で一定規模を超える開発を行うには、都道府県知事の許可が必要になる。
規模の基準は用途で異なる。太陽光発電設備の設置を目的とする開発行為は0.5ヘクタールを超えるものが許可対象で、これは令和5年4月1日以降の開発行為に適用される。それ以外の開発行為は1ヘクタールを超えるものが対象である(出典:林野庁 林地開発許可制度)。太陽光の基準が一般の半分に引き下げられたのは、森林の傾斜地に太陽光を敷き詰める開発で土砂災害や濁水の懸念が相次いだことを背景とする規律強化である(当社による解説)。
林地開発許可では、災害防止・水害防止・水の確保・環境保全の4要件への適合が審査され、防災調整池や排水施設の計画、緑地の確保などが求められる。許可までに要する期間も農地転用より長くなりやすく、用地を森林に求める場合はとりわけ早い着手が要る。
造成を伴う場合 — 盛土規制法
土地を平らにするために盛土や切土を行う場合、盛土規制法(正式名称:宅地造成及び特定盛土等規制法)の許可が関わる。この法律は令和4年5月27日に公布され、令和5年5月26日に施行された。2021年7月に静岡県熱海市で起きた盛土崩落による土石流災害を受け、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する仕組みである(出典:国土交通省 盛土規制法について)。

従来は地域ごとに規制の有無や強さがまちまちだったが、盛土規制法では都道府県知事等が「宅地造成等工事規制区域」や「特定盛土等規制区域」を指定し、その区域内では宅地・農地・森林を問わず、一定規模を超える盛土・切土・土石の堆積に許可が必要となる。蓄電所の造成も例外ではなく、規制区域内での造成は許可手続きと安全基準への適合が前提になる。用地が傾斜地で大規模な造成を伴う案件ほど、この手続きの重みが増す。
「見込み」と「確定」の違いに注意する
二つの規律は、確からしさの段階が異なる。接続検討の件数上限(2026年8月1日)はすでに運用開始時期まで定まった確定事項として整理されている。一方、契約申込時の用地権原要件(2026年10月1日)は施行予定の段階であり、最終的な要件の中身や必要書類は確定文書での確認が要る。
この違いは実務に直結する。8月1日の件数上限は確定スケジュールとして申込計画に織り込めるが、10月1日の権原要件は、最終的に求められる権利の証憑(登記、賃貸借契約など)が何かを、改正後の規程・様式が出てから押さえる、という構えで臨むのが安全である。
規程・申込様式の改正もあわせて進む
用地権原要件の導入にあたっては、関連する規程と申込様式の改正もあわせて予定されている。要件が新設されても、それを申込のどの欄でどう示すかという様式の整備が伴わなければ、現場の手続きは動かない。
つまり、権原をどの書類で裏づけるのか、申込のどの段階で提出するのか、といった具体は様式の改正で固まる部分が大きい。施行予定日だけでなく、改正後の様式の中身まで確認して初めて、実務の準備が完了する。
接続方式と今後の系統制約も視野に
用地と並んで、どの接続方式で系統につなぐかも案件の成否を左右する。空き容量を前提とする従来型のファーム接続に対し、混雑時に出力を制御することを条件に既存設備を活用するノンファーム型接続は、増強工事を待たずに連系できる選択肢として広がってきた。蓄電池は充放電のタイミングを系統状況に合わせやすく、ノンファーム型接続や次期中給システム(SCUC/SCED)の下での運用と相性がよいと考えられる(当社による解説)。
この系統制約の今後と蓄電池の動き方については、当ブログの系統制約の今後 — ノンファーム型接続・次期中給(SCUC/SCED)で詳しく扱っている。入口の件数上限と用地権原という今回の規律は、こうした接続方式・運用面の制約とあわせて理解すると、開発全体の組み立てが見えやすい。
なお、用地と系統の両方を見据えた事業計画づくりは、当社の再エネアグリゲーション事業でも扱う領域である。投資・設置の検討にあたっては、条件を入力して試算できる当社シミュレーターもあわせて活用されたい。
開発スケジュールへの影響
二段階の規律は、開発の順序そのものに影響する。これまで、用地の権利が固まる前に先に接続検討や契約申込を出して系統枠を押さえ、並行して用地交渉を進める、という進め方も見られた。今回の見直しは、その順序を組み替えることを促す。
接続検討では、同時に出せる件数の上限内に収まるよう、検討対象を確度で選別する。契約申込では、用地の権原を申込より前に固めておく。用地の権原を固めるには、前述のとおり農地・森林・造成にかかる許認可を通す時間が要る。結果として、用地確保と各種許認可を系統手続きより前倒しで並べ直し、確度の高い案件に資源を集中させる動き方が前提になる。
まとめ
第一に、接続検討の件数上限(2026年8月1日運用開始)は確定スケジュールとして申込計画に織り込む。検討するエリアの一般送配電事業者が公表する上限件数を、申込に着手する前に確認する。
第二に、自社の検討中案件を事業の確度で並べ替え、件数上限の範囲に収まるよう申込先を選別する。あわせて、契約申込より前に用地の権原を固められるよう、農地転用・林地開発・盛土規制といった許認可の所要時間を逆算して開発スケジュールを前倒しで組み直す。
第三に、用地権原要件(2026年10月1日施行予定)は見込みの段階のため、最終的な要件の中身と必要書類を改正後の規程・申込様式で確認してから、実務の準備を確定させる。確定事項と見込みを分けて扱うことが、無駄な先行投資を避けるうえで重要である。
件数上限と用地権原を織り込んだ案件で、どの程度の運用余地や収益機会が見込めるかは、当社シミュレーターで概算を試算されたい。接続段階の計画づくりを含めた具体的な事業組成の相談は、再エネアグリゲーション事業の業務ページからお問い合わせいただきたい。
参考文献
- 資源エネルギー庁 第7回次世代電力系統ワーキンググループ 資料1-1(2026年2月9日) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/007_01_01.pdf
- OCCTO 系統用蓄電池の新規連系における課題と対応(報告) 資料1-2(2026年2月9日) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/007_01_02.pdf
- 資源エネルギー庁 系統アクセス手続きの規律強化について 資料3(2025年12月24日) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/006_03_00.pdf
- 資源エネルギー庁 第11回次世代電力系統ワーキンググループ 資料2(2026年6月10日) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/011_02_00.pdf
- 経済産業省 資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ(審議会・研究会一覧) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/index.html
- 農林水産省 農地転用許可制度について https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/nouchi_tenyo.html
- 農林水産省 再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可 https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/einogata.html