この記事の要点
- 上限価格(報価上限)は応札してよい単価の天井であって、約定価格でも受取額でもない。約定価はマルチプライス方式とメリットオーダーで別に決まる。
- FY2026の公開値(2026年2月5日時点)は、複合・一次・二次①が15、二次②・三次①が7.21、三次②は上限なし。単位はいずれも円/ΔkW・30分。
- 上限価格は市場運営者(EPRX)が商品区分別に定め、実需給の2週間前までに公開する。
- 万一上限を超えて約定した場合は差額が返還され、上限を適用した後の単価で精算する。天井を超えた受取りは残らない設計になっている。
- 上限価格の水準が本格運用後も適切かを点検・見直す議論は、資源エネルギー庁・OCCTOの制度検討の論点として続いており、改定はまだ確定していない。
一文要約
上限価格(報価上限)は需給調整市場で応札してよい単価の天井で、市場運営者が商品区分別に定め、実需給の2週間前までに公開する。FY2026の公開値(2026年2月5日時点)は、複合・一次・二次①が15、二次②・三次①が7.21、三次②は上限なし(単位は円/ΔkW・30分)。これは約定価格そのものではなく、約定価はマルチプライス方式とメリットオーダー(安い順の積み上げ)で別に決まるため、上限価格を受取額と読み替えると収支の見立てを誤る。万一上限を超えて約定した場合は差額が返還され、上限を適用した後の単価で精算する。本格運用後の見直し論点は審議中であり、確定した改定ではない。
上限価格(報価上限)とは何か
需給調整市場では、応札してよい単価に商品区分別の天井が設けられている。これを上限価格、または報価上限と呼ぶ。市場運営者である一般社団法人電力需給調整力取引所(EPRX)が商品区分ごとに値を定め、実需給の2週間前までに公開する。応札する事業者は、この天井を超える単価を出すことができない。
上限価格が設けられている狙いは、市場支配力の行使や価格の急騰を抑えることにある。需給調整市場は、調達できる調整力(ΔkW)の量が一時的に限られる局面が生じやすい。供給が細った瞬間に応札単価を青天井で吊り上げられれば、本来あるべき水準を大きく超えた費用が消費者側に跳ね返る。商品区分別の天井は、その歯止めとして働く。
ここで実務上もっとも誤解されやすいのが、上限価格と約定価格・受取額の関係である。上限価格は、あくまで「ここまでなら応札してよい」という入札単価の上限であって、「実際にいくら受け取れるか」を示す数字ではない。約定でいくらの単価が付くかは、後述するマルチプライス方式とメリットオーダーによって市場が別に決める。この区別を取り違えて上限価格をそのまま受取額と読むと、収支の前提が大きくずれる。

なお、本記事で扱う商品区分別の値・公開タイミング・超過約定時の取扱いは、2026年7月1日に効力を持つEPRX取引ガイド(全商品)第10版と取引規程ver.18にもとづく。値は年度などで改定されうるため、応札の前には必ずEPRX公式で最新値を確かめる必要がある。



