この記事の要点
- 三次調整力②は応動60分以内・継続30分。指令はコマの60分前に確定しコマ内変更がないため、蓄電池の充放電(SOC)計画が立てやすい。
- 入札は実需給前日11:30に各エリアの調達希望量を公開、前日11:30〜14:00に受付、前日15時までに約定する(マルチプライス・メリットオーダー)。
- 最低入札量は1,000kW。供出可能量1,000kW以上なら蓄電池単独で「揚水・蓄電池」種別を選択でき、未満はアグリゲートが必要。
- 応札単価は商品区分別の上限価格(円/ΔkW・30分)以下。FY2026は三次②に上限価格の設定がない。
- 供出可能量を見るアセスメントⅠ・指令追従を見るⅡがあり、未達はペナルティ料金(Ⅰ=×1.5、Ⅱ=×1.0)に直結する。
一文要約
需給調整市場の取引会員は2026年3月末時点で139資格・126社に達し、前日取引化以降は応札も増加している(出典: 電力需給調整力取引所「取引実績の取りまとめ結果」2025年度)。この市場で系統用蓄電池が最初に狙いやすい商品が「三次調整力②」である。応動60分以内・継続30分という比較的ゆるやかな性能要件で、簡易指令システムでの参入も認められ、指令もコマの60分前に確定する。本記事は、三次調整力②に系統用蓄電池で参入する際の入札・指令・アセスメントの実務を、電力需給調整力取引所(EPRX)の取引ガイド・取引規程という一次情報にもとづいて当社が解説するものである。なお本記事は制度(ルール)の解説であり、収益額や利回りの予測は扱わない。

三次調整力②とは — 5商品のなかでの位置づけ
需給調整市場は、応動の速さと持続時間が異なる5つの商品(一次調整力・二次調整力①・二次調整力②・三次調整力①・三次調整力②)で構成される。速い商品ほど通信・制御の要件が厳しく、蓄電池にとっての参入ハードルも上がる。
三次調整力②は、このなかで最も応動が遅く(60分以内)、継続時間が短い(30分以上)商品である。この商品が担っているのは、ゲートクローズ後に残る再生可能エネルギーの予測誤差(FIT特例制度による発電量の上振れ・下振れなど)を埋める役割だと当社は理解している。求められる速さがゆるやかな分、火力・水力だけでなく蓄電池や需要側リソースなど多様な電源等が参加しやすいよう設計されているのが特徴である。
指令はコマ(30分単位)の60分前までに確定し、コマ内での指令値変更がない。「次のコマで何を求められるか」が1時間前に分かるため、蓄電池の充放電スケジュール(SOC管理)を計画的に組みやすい。簡易指令システムでの参入も認められており、専用線オンラインを必須とする二次調整力①と比べて初期の通信設備投資の負担が小さい。各商品の応動時間・継続時間・通信要件は取引規程第13条と取引ガイド第26条に定められている(出典: 電力需給調整力取引所 取引ガイド第10版/取引規程ver.18)。

5つの商品を「速さ」という軸で並べると、三次調整力②は最も遅い端に位置する。応動の速い一次調整力は数十秒オーダーの応答と専用の制御を要求し、新規参入では通信・試験のコストが重い。これに対し三次調整力②は、応動60分という余裕があるため、蓄電池が「指令を受けてから残量を確認し、放電を始める」運用に十分なリードタイムを確保できる。需給調整市場への入り口として三次調整力②が語られるのは、この性能要件のゆるやかさと通信方式の選択肢の広さによる。商品全体の要件を横断的に押さえたい場合はも参照されたい。



