この記事の要点
- 参入前の性能確認は、性能データで要件を満たすかを見る書類審査(取引規程第21条、原則3ヶ月以内)から始め、確認できなければ実働試験(第24条)へ進む2段階。
- 提出できるのはメーカー・請負・子会社・グループ会社が作成した試験成績書か、第三者認証を受けた実証データに限られ、事業者の独自計測や未認証の実績は採用されない。
- 実働試験は供出可能量の30〜70%で応動・継続・並列可否を確認し、瞬時電力のサンプリングは1秒以下で行う。
- 上位商品の適合で下位商品の実働試験を省ける免試があり、三次①適合で三次②、二次②適合で三次②・三次①を省略できる。
- 本項目は2026年7月1日施行の取引ガイド第10版・取引規程ver.18にもとづく、確定した制度である。
一文要約
需給調整市場へ参入するには、約束した調整力が実際に出ることを参入前に確かめる性能確認が課される。EPRX 取引規程では、まず性能データが第26条の技術要件を満たすかを見る書類審査(第21条、原則3ヶ月以内)から始め、それで確認できない場合に実機を動かす実働試験(第24条)へ進む2段階の流れになっている。ここで鍵になるのが提出データの信頼性で、事業者の自己申告である独自計測や未認証の実績は採用されず、メーカー試験成績書か第三者認証データであることが求められる。蓄電池事業者やアグリゲーターにとっては、参入準備の早い段階でこうした第三者データをそろえておくことが、審査を滞りなく通すうえでの前提になる。本記事は2026年7月1日施行の取引ガイド第10版・取引規程ver.18にもとづき、当社による解説として実務の流れと準備のポイントを整理する。
参入前性能確認とは — なぜ参入の前に性能を確かめるのか
需給調整市場は、電力系統の周波数と需給バランスを保つための調整力を売買する市場である。ここで取引されるのは「いざ指令が来たら、約束した量の出力を、約束した速さと時間だけ出せる能力」であり、入札した事業者の調整力が実際に出るかどうかは、系統の信頼性そのものに直結する。指令を受けても応動しないリソースが市場に紛れ込めば、周波数の維持に穴が空き、最悪の場合は広域的な需給逼迫につながりかねない。
このため、需給調整市場では発電・小売の通常の取引とは異なり、参入の前段階で個々のリソースの性能を確かめる事前審査が制度として課されている。これが参入前性能確認であり、EPRX(一般社団法人電力需給調整力取引所)の取引規程に手続きが定められている。確認の対象になるのは、応動の速さ(指令から動き出すまでの時間)、継続して出力できる時間、複数リソースを束ねた際の並列運転の可否といった、商品区分ごとの技術要件である。これらの要件の本体は取引規程第26条に置かれ、性能確認はその第26条の要件を満たすかどうかを判定する手続きという位置づけになる。
重要なのは、この性能確認が「実機を必ず動かす試験」から始まるわけではない、という点である。後述するとおり、要件を満たすかはまず書類(性能データ)で審査され、それで確認できる場合は実働試験を行わずに済む。実機を動かす実働試験は、書類だけでは確認しきれなかった場合に進む第2段階に位置づけられている。蓄電池事業者やアグリゲーターにとっては、この「まず書類」という設計を理解し、提出する性能データをどう準備するかが、参入実務の出発点になる。




