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高度化法の非化石44%目標と第3フェーズ|証書調達と蓄電池

The Energy Supply Structure Advanced Utilization Act's 44% Non-Fossil Target and Phase 3 (FY2026-2028): Retailer Certificate Procurement and Ripple Effects on Storage

エネルギー供給構造高度化法は、年間販売電力量5億kWh以上の小売電気事業者に2030年度の非化石電源比率44%以上を求める。達成度は3年単位の中間目標で評価され、2026年度は第3フェーズ(2026〜2028)の初年度。小売は非化石証書を高度化法義務達成市場・再エネ価値取引市場で調達して目標に充当す

公開日: 2026/6/25更新日: 2026/6/25

CONTENTS

  1. この記事の要点
  2. 一文要約
  3. 高度化法の非化石電源目標とは
  4. なぜ小売は自社電源だけで目標を満たせないのか
  5. 中間目標とフェーズ — 3年単位で達成度を測る
  6. 非化石証書を取引する2つの市場
  7. 第3フェーズで継続審議中の論点
  8. 蓄電池・再エネ事業者への波及
  9. 小売・需要家・発電事業者がいま確認すべきこと
  10. まとめ
  11. 参考文献
  12. よくある質問

この記事の要点

  • エネルギー供給構造高度化法は、小売電気事業者に2030年度の非化石電源比率44%以上を求めている(出典:資源エネルギー庁)
  • 評価対象は、前年度の電気の供給量が5億kWh以上の小売電気事業者等。国が事業者ごとに目標を毎年通知し達成状況を評価する
  • 達成度は3年単位の中間目標(フェーズ)で区切られ、2026年度は第3フェーズ(2026〜2028年度)の初年度にあたる
  • 小売は自社電源だけでは目標を満たしにくく、不足分は非化石証書を市場で調達して充当する。証書は高度化法義務達成市場と再エネ価値取引市場で取引される
  • 報道などで見かける具体的な中間目標値は確定値とは限らないため、必ず資源エネルギー庁の一次資料で確認する

一文要約

資源エネルギー庁によれば、エネルギー供給構造高度化法は前年度の供給量が5億kWh以上の小売電気事業者等に対し、2030年度の非化石電源比率44%以上という目標を課している。その達成度は3年単位の中間目標で評価され、2026年度は第3フェーズ(2026〜2028年度)の初年度にあたる。小売は自社の電源構成だけで目標を満たすことが難しいため、不足分を非化石証書として市場で調達し、目標に充当する。証書は非FIT証書を扱う高度化法義務達成市場と、FIT証書を扱う再エネ価値取引市場で取引され、その価格や取引方法といった制度の細部は制度検討作業部会で継続的に見直されている。本記事は、確定している骨格と審議中の論点を一次資料に基づき切り分けて整理する。

高度化法の非化石電源目標とは

エネルギー供給構造高度化法(正式名称:エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律、通称「高度化法」)は、エネルギー供給事業者に対し、供給する電気のうち一定割合を再生可能エネルギーや原子力などの非化石電源にすることを求める法律である。

電力分野では、小売電気事業者が供給する電気の「非化石電源比率」を引き上げることが目標として設定されている。資源エネルギー庁によれば、その最終的な到達点は2030年度の非化石電源比率44%以上である(出典:資源エネルギー庁 高度化法 中間目標達成状況の評価)。これは個社の努力目標ではなく、法律に基づく目標として国が達成状況を評価する仕組みになっている点が特徴である。

ここで重要なのは、目標が課されるのは全ての小売ではないという点である。高度化法では、前年度の電気の供給量が5億kWh以上の小売電気事業者等を評価対象とし、国が事業者ごとに達成すべき非化石電源比率を毎年通知し、その達成状況等について評価を行う。規模の大きい事業者ほど、自社の調達計画のなかで非化石電源比率を意識的に管理する必要が生じる。

高度化法の非化石電源44%目標と第3|図1

非化石電源とは、発電時にCO2を排出しない、あるいは化石燃料を燃焼させない電源を指す。具体的には太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギーに加え、原子力が含まれる。高度化法の目標は「再エネだけ」ではなく「非化石」という広いくくりで設定されている点に注意したい。再エネと原子力を合わせて非化石電源と整理されるため、小売各社の調達戦略も再エネ証書の調達だけに限られるわけではない。

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よくある質問

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非化石証書そのものの基礎については、当ナレッジベースの再生可能エネルギーと電力市場もあわせて参照されたい。

なぜ小売は自社電源だけで目標を満たせないのか

小売電気事業者の電源構成は、自社で保有・契約する電源と、卸電力市場(JEPX)などからの市場調達電源の組み合わせで決まる。市場から調達した電気には、必ずしも非化石としての価値が紐づいているとは限らない。つまり、電気としての量(kWh)を確保できても、その電気が「非化石電源由来である」と証明する価値が別途必要になる。

この「電気の量」と「非化石としての環境価値」を切り離して取引できるようにしたのが非化石証書である。小売は、電気そのものは市場や相対で調達し、足りない非化石価値を証書として買い足すことで、自社が供給する電気全体の非化石電源比率を引き上げる。これが高度化法目標達成の実務上の中心的な手段になる。

この構造があるため、目標が44%へと段階的に引き上げられるほど、証書市場で取引される非化石価値への需要が制度的に底支えされることになる。再エネ事業者や、再エネ電気を扱うアグリゲーターにとっては、自らが生み出す環境価値の「出口」が制度によって担保されるという見方ができる。

電源そのものの調達と環境価値の調達が分離している点は、容量(kW)と電力量(kWh)が別市場で取引される容量市場の考え方とも通じる。市場の全体像は日本の電力市場概要で整理している。

中間目標とフェーズ — 3年単位で達成度を測る

2030年度の44%という最終目標は、いきなり到達するものではない。資源エネルギー庁は、その達成度を途中で評価するために、中間目標を3年単位(フェーズ)で設定している。各フェーズの期間中、対象となる小売は通知された中間目標値の達成を求められ、達成状況が評価される。

フェーズの区切りは次のように推移してきた。第1フェーズの評価を経て、第2フェーズは2023年度から2025年度を対象期間としており、2023年度がその初年度として評価された。2024年度はこの第2フェーズの2年目にあたる。そして2026年度からは、2026〜2028年度を対象とする新たな中間目標期間、すなわち第3フェーズに入る。2026年度はその初年度という位置づけである。

高度化法の非化石電源44%目標と第3|図2

第2フェーズの達成状況については、資源エネルギー庁が2024年度ぶんの評価を公表している。それによれば、義務対象者のうち51者が中間目標値を達成した一方、4者が中間目標値を達成できなかった。未達の4者のうち3者は達成率が97%以上であったのに対し、1者は達成率が60%台にとどまった。未達事業者に対しては、高度化法第8条第1項の規定に基づく対応(指導・公表等の枠組み)が行われている(出典:資源エネルギー庁 高度化法2024年度の中間目標達成状況の評価について)。

ここで一つ、実務上の注意点がある。報道などで見かける具体的な中間目標値(例として「14.8%」といった数字)は、必ずしも確定値や全社一律の値とは限らない。中間目標値は需給バランスの前提などを踏まえて設定・見直しされるものであり、フェーズや年度によって変わりうる。当社としては、具体的な目標値を引用する場合は、必ず資源エネルギー庁の一次資料で最新値を確認することを推奨する。本記事でも、確定していると断言できるのは「2030年度44%以上」という最終目標と、「3年単位で中間目標が区切られている」という枠組みであり、個別年度の具体的な中間目標値については一次資料の確認を前提とする立場をとる。

非化石証書を取引する2つの市場

小売が目標達成のために調達する非化石証書は、現在2つの市場に分かれて取引されている。2021年11月に市場が分割され、再エネ価値取引市場と高度化法義務達成市場が設けられた。両者は扱う証書の種類と参加者が異なる。

高度化法義務達成市場は、その名のとおり高度化法の義務達成を主目的とする市場で、非FIT証書(FITの支援を受けていない非化石電源由来の証書)が取引される。市場分割後、高度化法の義務達成に充てられる証書は原則として非FIT証書とされた。参加できるのは小売電気事業者など義務対象に関わる主体である。

一方の再エネ価値取引市場では、FIT制度の支援を受けた電源由来のFIT証書が取引される。こちらは小売だけでなく、需要家(企業)も直接参加して再エネ価値を調達できる点が大きな特徴である。RE100対応やカーボンニュートラル目標に向けて、産業需要家が自ら証書を買い付ける環境がここで整えられている。FIT・FIPの基礎はFIT・FIP制度の仕組みで扱っている。

高度化法の非化石電源44%目標と第3|図3

価格面では、両市場とも下限価格(最低価格)が設定されている。高度化法義務達成市場の非FIT証書(再エネ指定なし)の下限価格は0.6円/kWh、再エネ価値取引市場のFIT証書の下限価格は0.4円/kWhである。再エネ価値取引市場については、2023年度第1回オークションで最低価格が0.3円/kWhから0.4円/kWhへ引き上げられた経緯がある(出典:JEPX 非化石価値取引の価格制限について)。実際のオークションでは、約定価格が下限価格に張り付く傾向が課題として指摘されてきた。

なお、需給バランスが一定の条件を下回る場合に、FIT証書を非FIT証書の価格上限を超える価格で高度化法の義務達成に充てる代替調達の枠組みなど、市場間の関係を巡る制度設計は継続的に議論されている。価格や取引方法の細部は、制度検討作業部会の最新資料で確認する必要がある(出典:資源エネルギー庁 制度検討作業部会 非化石価値取引について(2025/12/12 資料3))。

第3フェーズで継続審議中の論点

第3フェーズ(2026〜2028)の制度の骨格は固まりつつあるが、細部は制度検討作業部会で継続審議中である。当社が把握している範囲で、追っておくべき論点は次のように整理できる。

論点状態着眼点
中間目標値の具体値審議・通知ベース需給バランスの前提で変わりうる。一次資料で確認
証書の価格制限(下限/上限)過去に見直し実績あり下限張り付き対応・市場間の価格関係
市場間の代替調達ルール審議中需給バランス次第でFIT証書の充当を認める枠組み
取引方法・約定方式継続的な見直し対象オークション設計・相対取引の扱い

これらはいずれも「確定」ではなく「見込み・審議中」の性格を持つ。当社の立場としては、第3フェーズに入ったという枠組み自体は動かないものとして扱いつつ、各論点の具体値や運用ルールは制度検討作業部会の資料が更新されるたびに追う、という姿勢が妥当だと考えている。確定事項と審議中事項を混同して計画を固めてしまうと、後の制度更新で前提が崩れるリスクがあるためである。

電力制度改革の全体的な流れのなかでの位置づけは、電力システム改革の全体像もあわせて参照されたい。

蓄電池・再エネ事業者への波及

高度化法の目標は小売に課される義務だが、その影響は証書市場を通じて発電側・需要側にも波及する。ここでは蓄電池事業者と再エネ事業者の視点で、波及の経路を整理する。

再エネ事業者にとって、高度化法目標の段階的な引き上げは、自らが生み出す非化石価値(証書)に対する制度的な需要を意味する。電気そのものの販売に加えて、環境価値という第二の収益源の出口が制度で底支えされる構図である。FIT電源であれば再エネ価値取引市場、非FIT電源であれば高度化法義務達成市場が、それぞれ価値の換金経路になる。

蓄電池(系統用蓄電池)については、整理が必要である。蓄電池は電気を「ためて放電する」設備であり、それ自体が非化石電源を「発電」するわけではない。したがって、蓄電池の充放電が直接に非化石証書を生むという単純な関係ではない。蓄電池が高度化法の文脈で意味を持つのは、主として再エネの導入拡大を支える役割を通じてである。太陽光・風力といった変動性の高い再エネは、出力制御(発電を絞る措置)によって価値が捨てられてしまう局面がある。蓄電池はこの余剰を吸収し、再エネ電気をより多く系統に届ける役割を担う。再エネが増えるほど非化石電源比率の引き上げ余地が広がり、それが高度化法目標の達成を後押しする、という間接的な経路である。

加えて、蓄電池は卸電力市場での時間差取引(安い時間に充電し高い時間に放電する裁定取引)や需給調整市場への参加といった、複数の収益機会を持つ設備である。高度化法・非化石証書はその収益源そのものではないが、再エネ大量導入を前提とした電力システム全体の方向性を示すものであり、蓄電池の事業環境を理解するうえで欠かせない背景知識といえる。蓄電池の市場参加の具体については、系統用蓄電池によるJEPX裁定取引やアグリゲーターの役割で扱っている。

LehmanSoft Japan は、蓄電池アグリゲーション事業を中核に、再エネ大量導入時代の電力システムにおける蓄電池の役割を実務面から支援している。再エネ・蓄電池の事業性を概算で把握したい方は、収益シミュレーターで自社案件の試算が可能である(なお、本記事の高度化法・非化石証書は小売側の義務に関する制度であり、シミュレーターが扱う蓄電池の収益とは直接の計算関係にない点に留意されたい)。

小売・需要家・発電事業者がいま確認すべきこと

立場ごとに、第3フェーズ初年度の2026年度に確認しておくべき事項を整理する。

小売電気事業者は、まず自社が義務対象(前年度供給量5億kWh以上)に該当するかを確認し、該当する場合は国から通知される中間目標値を起点に、非化石証書の調達計画を立てる。第3フェーズの3年間を見通したうえで、不足する非化石価値をどの市場(高度化法義務達成市場/再エネ価値取引市場)からどの程度調達するかを設計することになる。未達の場合は高度化法第8条第1項に基づく対応の対象となりうるため、計画段階での余裕の確保が重要である。

産業需要家は、自社の再エネ調達(RE100・カーボンニュートラル対応など)が、再エネ価値取引市場の制度見直しの影響を受けうる点を見込んでおく。証書の価格制限や取引方法の変更は、調達コストや調達のしやすさに直結する。

発電事業者は、自らの電源がFIT/非FITのいずれに該当するかによって、証書の換金経路(市場)が分かれることを踏まえ、市場制度の見直し動向を継続的に追う。

いずれの立場でも共通するのは、確定している骨格(2030年度44%・3年フェーズ・2市場構成)と、審議中の細部(具体的な中間目標値・価格制限・市場間ルール)を切り分けて理解することである。

まとめ

エネルギー供給構造高度化法の非化石電源目標は、2030年度44%以上という最終目標と、それを3年単位で評価する中間目標(フェーズ)から成る。2026年度は第3フェーズ(2026〜2028)の初年度であり、小売は非化石証書を2つの市場で調達して目標に充当する。確定している骨格は明確だが、具体的な中間目標値・価格制限・市場間ルールといった細部は制度検討作業部会で継続審議中である。

実務に落とすうえでの要点は次の3点に集約される。

  1. 自社・自身の立場(義務対象の小売か、需要家か、発電事業者か)を確認し、関係する市場(高度化法義務達成市場/再エネ価値取引市場)を特定する。
  2. 具体的な中間目標値や価格制限は、報道値ではなく資源エネルギー庁・制度検討作業部会の一次資料で最新値を確認する。確定事項と審議中事項を切り分けて計画を立てる。
  3. 再エネ・蓄電池の事業環境としての意味を理解する。高度化法は再エネ価値の制度的な出口を底支えし、蓄電池はその再エネ導入拡大を間接的に支える。

再エネ・蓄電池の事業性を概算で把握したい方は、LehmanSoft 収益シミュレーターで自社案件の試算を行われたい。具体的な事業組成の相談は、LehmanSoft 事業ページからお問い合わせいただきたい。

参考文献

  1. 資源エネルギー庁 高度化法2024年度の中間目標達成状況の評価について(2026/03/24)(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/nonfossil/koudokahou/20260324.html)
  2. 資源エネルギー庁 制度検討作業部会 非化石価値取引について(2025/12/12 資料3)(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/system_review/pdf/109_03_00.pdf)
  3. 資源エネルギー庁 高度化法2023年度の中間目標達成状況の評価について(2024/10/07)(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/nonfossil/koudokahou/20241007.html)
  4. 資源エネルギー庁 高度化法に係る中間評価の基準となる目標値(中間目標値)の設定について(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/nonfossil/koudokahou/200309a.html)
  5. JEPX 非化石価値取引の価格制限について(https://www.jepx.jp/nonfossil/outline/pdf/jepx20230710.pdf)
  6. JEPX 非化石価値取引規程(https://www.jepx.jp/nonfossil/outline/pdf/nonfossil_rules.pdf)

本記事は2026年6月24日時点の公開情報に基づき作成された。制度・価格・中間目標値は予告なく変更される場合があるため、実務判断にあたっては最新の一次情報および専門家への相談を推奨する。