低圧系統用蓄電池の年間粗収益は、3 市場の合計で構成される。各市場の構造と年次の試算値を示す。
JEPX 裁定収益 (エネルギーアービトラージ)
日本卸電力取引所 (JEPX) のスポット市場で、安値時間帯に充電・高値時間帯に放電する裁定取引である。
※ 想定: 実放電量 (kWh/日) × 価格スプレッド (円/kWh) × 年間稼働日数 × 稼働率 → 年間 JEPX 収益
| 項目 | 保守シナリオ | 中央シナリオ |
|---|
| 実放電量 (1 日あたり) | 90 kWh | 95 kWh |
| 価格スプレッド | 10 円/kWh | 18 円/kWh |
| 年間稼働日数 | 360 日 | 365 日 |
| 稼働率 (裁定取引採用率) | 20% | 25% |
| 年間 JEPX 収益 | 約 7 万円 | 約 16 万円 |
200kWh モデルでは実放電量が約 2 倍となり、保守 12〜13 万円 / 中央 30〜31 万円 となる。
需給調整市場 (一次・二次・三次の mix 運用)
需給調整市場は応動時間別に商品が分かれており、低圧蓄電池は技術的に全商品参加可能である (出典:資源エネルギー庁 需給調整市場について 第 109 回制度設計専門会合 資料 6)。
なお、需給調整市場の各商品の上限価格・落札率は OCCTO 公表の直近約定価格分布に基づき変動するため、本記事では業界水準を踏まえた想定レンジで試算する(具体的な単価・配分は案件設計依存)。
また低圧分散リソースの場合、二次調整力 ①(LFC)・②(EDC)は専用線制御が必須のため原則対象外、三次調整力 ①(15 分応動)・②(45 分応動)が現実的な参加範囲となる。
中央シナリオの試算 (業界水準の単価・稼働率・落札率前提):
※ 想定: 49.5 kW × 15.0 円 × 48 スロット × 365 日 × 稼働率 70% × 落札率 60% → 年間 約 547 万円
保守シナリオ (単一商品中心・低約定率前提):
※ 想定: 49.5 kW × 12.2 円 × 48 スロット × 365 日 × 稼働率 50% × 落札率 40% → 年間 約 212 万円
これは記事 #1 のレンジ (保守 約 175 万円 / 中央 約 550 万円) と概ね一致する。アグリゲーターの最適化アルゴリズム品質により、同じ機材でも 2〜3 倍の収益差が生じる領域である。
容量市場 (束ね後按分)
OCCTO が運営する 4 年先の供給力確保市場で、約定後は実放電がなくとも待機していること自体が対価対象となる (出典:OCCTO 容量市場)。
| 項目 | 保守シナリオ | 中央シナリオ |
|---|
| 約定価格 (円/kW・年) | 11,000 円 | 14,000 円 |
| 入札容量 (kW) | 49.5 kW | 49.5 kW |
| 落札確率 | 80% | 100% |
| 年間容量市場収益 | 約 44 万円 | 約 69 万円 |
容量市場収益は実際の市場操作に依存しないため、3 収益源の中で最も「固定収入的」な性質を持つ。
年間粗収益の合計 (100kWh モデル)

| 収益源 | 保守シナリオ | 中央シナリオ |
|---|
| JEPX 裁定 | 約 7 万円 | 約 16 万円 |
| 需給調整市場 | 約 212 万円 | 約 547 万円 |
| 容量市場 | 約 44 万円 | 約 69 万円 |
| 合計粗収益 | 約 263 万円 | 約 632 万円 |
| アグリゲーター手数料控除後 | 約 224 万円 | 約 556 万円 |
| O&M・固定資産税・保険控除後 (実質手取り) | 約 180〜195 万円 | 約 480〜510 万円 |
200kWh モデルは JEPX 裁定が約 2 倍、需給調整市場の三次以下商品が +20〜30%、容量市場は同等となり、合計で保守 約 340 万円 / 中央 約 760 万円 規模となる。