LehmanSoft Japan

ELECTRICITY MARKET KNOWLEDGE BASE

ホームトピック一覧制度デスクダッシュボードお問い合わせEnglish
LehmanSoft Japan

蓄電池アグリゲーター。JEPX・EPRX・容量市場に参加し、運用代行と市場参入コンサルティングを提供しています。

お問い合わせ→

TOPICS

  • 高度化法の非化石44%目標と第3フェーズ|証書調達と蓄電池
  • 需給調整市場の参入前性能確認:書類審査・第三者データ・実働試験の流れ
  • 需給調整市場の上限価格(報価上限):商品区分別のFY2026値と今後の見直し論点
  • 二次調整力①の参入要件 — 専用線オンライン前提と遅れ時間(新設30秒・既設120秒)を蓄電池の視点で読む
  • V1・V2単価登録とkWh精算の実務:毎週火曜14時締切・右肩上がりの段階単価(2026年7月版)
  • 容量拠出金の実務(2026年度):小売の支払スケジュールと経過措置控除

CATEGORIES

  • 基礎知識
  • 市場・取引所
  • エネルギー政策
  • アグリゲーション実務
  • すべてのトピック →

DATA

  • ダッシュボード
  • JEPX 現物
  • 9 エリア需要実績
  • インバランス料金

© 2026 LehmanSoft Japan株式会社. 本サイトの情報は教育目的で提供されており、投資助言ではありません。

Japan Electricity Market Knowledge Base

  1. ホーム
  2. ›トピック一覧
  3. ›中長期取引市場の制度設計 — 先渡・先物とベースロード市場で価格をどう固定するか
市場・取引所

中長期取引市場の制度設計 — 先渡・先物とベースロード市場で価格をどう固定するか

Designing Japan's Mid-to-Long-Term Power Trading Market: Forwards, Futures, and the Baseload Market

資源エネルギー庁の制度設計ワーキンググループが進める中長期取引市場(先渡・先物・ベースロード市場)の整備検討を解説。すでに動くベースロード市場・先渡市場・電力先物(TOCOM・EEX)と、これから議論する全体設計を分けて整理し、価格変動リスクのヘッジ手段としての論点、流動性・価格指標づくり、蓄電池・

公開日: 2026/6/25更新日: 2026/6/25

CONTENTS

  1. この記事の要点
  2. 一文要約
  3. 中長期取引市場とは — スポット中心の卸市場が抱える時間軸の課題
  4. なぜ今、中長期取引市場の整備が論点になるのか
  5. ベースロード市場 — すでに動いている確定済みの市場
  6. 先渡市場 — JEPXで運営される相対的な取引の場
  7. 電力先物市場 — TOCOM・EEXで上場済みの金融的ヘッジ手段
  8. 確定している市場と、これから議論する論点を分ける
  9. 蓄電池・小売・発電から見た中長期の価格ヘッジ
  10. 流動性と価格指標 — 中長期市場の設計で繰り返し出る論点
  11. 実務上の押さえどころ — 検討中の論点との向き合い方
  12. まとめ
  13. 参考文献
  14. よくある質問

この記事の要点

  • 卸電力市場は当日・前日のスポットが中心で、数か月から数年先の価格を固定しにくい。資源エネルギー庁の制度設計ワーキンググループが、リスクヘッジ手段としての中長期取引市場(先渡・先物・ベースロード)の整備に向けた論点整理を進めている(検討中・時期未定)。
  • ベースロード市場はすでにJEPXで運営されている確定済みの市場で、年間固定価格でベースロード電源の電気を売買できる。新電力のベースロード電源アクセスを容易にする目的で導入された。
  • 電力先物は東京商品取引所(TOCOM)で2019年9月に取引開始、2022年4月に本上場し、欧州エネルギー取引所(EEX)でも上場している。資源エネルギー庁は流動性拡大を課題として検討会を設けた。
  • 「すでに動いている市場」(ベースロード・先物)と「これから全体設計を議論する論点」(先渡を含む中長期取引市場全体)は段階が異なる。混同せず分けて押さえることが重要である。
  • 蓄電池・小売・発電のいずれにとっても、中長期の価格固定手段が拡充されれば調達・販売戦略やリスク評価の前提が変わり得る。一次資料でスケジュールを継続的に追うのが実務上の構えとなる。

一文要約

資源エネルギー庁の制度設計ワーキンググループは、中長期取引市場(先渡市場・先物市場・ベースロード市場等)の整備に向けた検討を進めている。電力先物の取引量は東京商品取引所などで増加しており(出典: 経済産業省「電力先物の活性化に向けた検討会 とりまとめ」2024年4月)、当日・前日のスポット中心では固定しにくい中長期の価格変動に対し、リスクヘッジの手段として市場機能を強める狙いがある。本記事では、すでにJEPXで運営されているベースロード市場・先渡市場と、TOCOMなどで上場している電力先物、そしてこれから全体設計を議論する中長期取引市場の論点を、確定事項と審議中の事項を分けて整理する。当社は制度の解説の立場であり、本稿は2026年6月時点の公開情報に基づく。

中長期取引市場とは — スポット中心の卸市場が抱える時間軸の課題

日本の卸電力市場は、当日・前日のスポット(一日前市場)が取引の中心である。スポット市場は30分コマ単位で翌日の電気を売買する仕組みで、需給に応じて価格が刻々と動く。短期の需給調整には適している一方、数か月先・数年先の価格をあらかじめ固定する用途には向かない。

ところが、小売電気事業者にとっては「半年後・一年後にいくらで電気を仕入れられるか」が経営の安定に直結する。発電事業者にとっても「将来の電気をいくらで売れるか」が投資回収の前提となる。スポットだけでは、この中長期の価格変動リスクを抱え込んだまま事業を続けることになる。

そこで、先の価格をあらかじめ固定できる取引手段が必要になる。これが中長期取引市場である。資源エネルギー庁の整理では、中長期取引市場は先渡市場・先物市場・ベースロード市場などを含む幅広い概念として扱われており、リスクヘッジ手段としての市場機能を強めることが狙いとされている。

ここで最初に押さえておくべき点がある。中長期取引市場という言葉のなかには、すでに運営されている市場と、これから整備を議論する論点が混在している。両者を分けて理解しないと、「いつから使えるのか」を取り違える。本記事はこの区別を軸に進める。

中長期取引市場の制度設計 — 先渡・|図1

系統用蓄電池の運用代行・収益最大化をご検討ですか?

埼玉2MW/8MWhの自社蓄電所を運用するアグリゲーターが、需給調整・JEPX・容量の3市場でマルチユース運用を代行します。まずは無料相談・収益シミュレーションから。

運用代行を無料相談する →収益シミュレーターで試算する
中長期取引市場先渡市場電力先物ベースロード市場価格変動リスク ヘッジ卸電力市場 JEPX制度設計ワーキンググループ流動性 価格指標

よくある質問

関連トピック

市場・取引所

高度化法の非化石44%目標と第3フェーズ|証書調達と蓄電池

The Energy Supply Structure Advanced Utilization Act's 44% Non-Fossil Target and Phase 3 (FY2026-2028): Retailer Certificate Procurement and Ripple Effects on Storage

エネルギー供給構造高度化法は、年間販売電力量5億kWh以上の小売電気事業者に2030年度の非化石電源比率44%以上を求める。達成度は3年単位の中間目標で評価され、2026年度は第3フェーズ(2026〜2028)の初年度。小売は非化石証書を高度化法義務達成市場・再エネ価値取引市場で調達して目標に充当す

詳しく読む →
市場・取引所

需給調整市場の上限価格(報価上限):商品区分別のFY2026値と今後の見直し論点

Balancing Market Price Caps (Bid Ceilings): FY2026 Values by Product and the Ongoing Review

需給調整市場の上限価格(報価上限)は応札単価の天井で、約定価格でも受取額でもない。FY2026の公開値は複合・一次・二次①が15、二次②・三次①が7.21、三次②は上限なし(円/ΔkW・30分、2026/02/05公表)。実需給2週間前公開・超過約定の差額返還・本格運用後の見直し論点まで、当社が一次

詳しく読む →
市場・取引所

容量拠出金の実務(2026年度):小売の支払スケジュールと経過措置控除

Capacity Payment in Practice (FY2026): Retailer Billing Schedule and Transition Deductions

電力広域的運営推進機関(OCCTO)が2025年10月に開いた小売電気事業者向けの容量拠出金説明会では、2026年度実需給ぶんの算定方法と支払い日程が整理された。容量市場で確保した将来の供給力(kW)の費用は、各社のkWシェア等で按分されて小売の固定的な調達コストになる。年間総額

詳しく読む →
← トピック一覧に戻る

なぜ今、中長期取引市場の整備が論点になるのか

中長期の価格固定手段の整備が改めて論点化している背景には、いくつかの構造的な事情がある。

価格変動の振れ幅が拡大していることが大きい。燃料価格の変動や再生可能エネルギーの導入拡大により、卸電力価格は時間帯・季節によって大きく動くようになった。昼間に太陽光が大量に発電する時間帯は価格が下がり、朝夕の需要ピーク時には価格が上がる、いわゆるダックカーブの深まりが背景にある。短期の価格が読みにくくなるほど、中長期で価格を固定しておきたいというニーズは強まる。

小売事業者の調達戦略の安定化という観点もある。卸市場価格が急騰した局面では、固定価格で電気を仕入れられる手段の有無が事業の継続性を左右する。スポット一辺倒の調達は、価格高騰局面で大きな損失につながりかねない。中長期の固定手段は、こうしたリスクを平準化する役割を担う。

政策面では、エネルギー基本計画においても先渡市場やベースロード市場とともに、先物市場の活性化や事業者のリスク管理が重視されてきた経緯がある(出典: 資源エネルギー庁 エネルギー白書2025 第2部第6章第1節)。市場機能を通じて事業者が自律的にリスクを管理できる環境を整えることは、電力システム改革の一貫した方向性として位置づけられている。

ベースロード市場 — すでに動いている確定済みの市場

中長期取引市場のなかで、最も明確に「すでに動いている」のがベースロード市場である。

ベースロード市場は、新電力(新規参入の小売電気事業者)が、石炭火力・大型水力・原子力・地熱といったベースロード電源の電気にアクセスしやすくすることを目的に導入された市場である。日本全体の供給力の約9割弱を占める大規模電源を保有する事業者に対し、ベースロード電源の電気の供出を制度的に求め、新電力が年間固定価格で購入できるようにする仕組みである(出典: 資源エネルギー庁「ベースロード市場について」2024年9月 資料5)。

取引はJEPX(日本卸電力取引所)が運営している。取引会員等が1年間または2年間を通じて受け渡す電気を売買し、受渡期間における電気の受け渡しと代金の授受が行われる。スポットが30分コマ単位なのに対し、ベースロード市場は長期間にわたって一定量の電気を固定価格で受け渡す点が特徴である。

なお、ベースロード市場における2026年度受渡し分以降の値差への対応については、制度設計ワーキンググループにおける間接送電権の議論の動向等も注視しつつ、現状行っている値差清算の在り方等を引き続き検討していくこととされている。市場そのものは運営されているが、細部の制度は引き続き調整が続いているという状況である。

中長期取引市場の制度設計 — 先渡・|図2

先渡市場 — JEPXで運営される相対的な取引の場

ベースロード市場と並んで、先渡市場もJEPXで運営されている。

先渡市場は、将来の一定期間にわたって受け渡す電気を、あらかじめ決めた価格で売買する市場である。JEPXの先渡市場では、週間24時間型・月間24時間型・年間24時間型といった商品が用意されている(出典: JEPX 先渡市場)。週単位・月単位・年単位の期間で、一定の時間帯の電気をまとめて取引できる構造である。

先渡市場は、スポット市場の価格変動を中長期にわたって平準化したい事業者にとって、現物の調達・販売を固定する手段となる。電力先物市場の開発も、一定期間における受け渡しを行うベースロード市場・先渡市場の活性化に資するよう設計されてきた経緯がある。現物の市場である先渡・ベースロードと、後述する金融的なヘッジ手段である先物は、互いに補完する関係にある。

ただし、先渡市場の流動性(取引の活発さ)については、なお拡大の余地が論点として残されている。取引が活発になるほど売買がマッチングしやすくなり、利用者の利便性が高まる好循環が生まれる。逆に取引が薄いと、使いたいときに相手が見つかりにくい。この流動性をいかに高めるかが、中長期取引市場全体の設計に共通する課題となっている。

電力先物市場 — TOCOM・EEXで上場済みの金融的ヘッジ手段

中長期取引市場のもう一つの柱が、電力先物市場である。これも「すでに動いている」市場に分類される。

電力先物は、将来の電力価格をあらかじめ固定することで、価格変動リスクをヘッジするための金融商品である。現物の電気そのものを受け渡すというより、価格変動による損益を相殺する仕組みとして機能する。卸電力市場の価格変動リスクの固定化、燃料価格と売電価格の差(スパーク・スプレッド)の固定化など、中長期から短期にかけてのヘッジニーズに応える。

日本では、東京商品取引所(TOCOM)が2019年8月に電力先物の試験上場の認可を取得し、同年9月から取引を開始、2022年4月に本上場した(出典: 資源エネルギー庁「電力も『先物取引』?!(中編)」)。その後、電力先物の取引量は増加しており、TOCOMのほか、欧州エネルギー取引所(EEX)、インターコンチネンタル取引所(ICE)、第二種特定商品市場類似施設における取引、相対での店頭商品デリバティブ取引等を含め、電力先物市場は活性化しつつある。

中長期取引市場の制度設計 — 先渡・|図3

電力先物をリスクヘッジの有効なツールとするには、取引市場に流動性があることが重要である。市場取引が増えるほど取引がマッチングしやすくなり、参加者の利便性が向上する好循環が生まれる。経済産業省の商務・サービスグループは「電力先物の活性化に向けた検討会」を設け、2024年4月にとりまとめを公表した(出典: 経済産業省「電力先物の活性化に向けた検討会 とりまとめ」2024年4月)。とりまとめでは、事業者が先物と組み合わせて利用する現物の制度・商流をふまえて先物市場を設計すること、財務上信頼できる金融機関が取引に参入しやすい環境を整備することなどが提言されている。

確定している市場と、これから議論する論点を分ける

ここまでで重要なのは、中長期取引市場という言葉の中身を段階で区別することである。混同すると「もう使えるのか、まだ検討中なのか」を取り違える。

すでに運営されている確定済みの市場は、ベースロード市場(JEPX運営)・先渡市場(JEPX運営)・電力先物市場(TOCOM・EEX等で上場)である。これらは現に取引が行われており、事業者は今日時点で利用できる。一方、資源エネルギー庁の制度設計ワーキンググループが進めているのは、これらを含む中長期取引市場全体の整備に向けた論点整理であり、市場機能をどう強めるか、流動性をどう高めるかといった設計の議論である。この全体設計については時期は未定で、審議の段階にある(出典: 制度設計WG「中長期取引市場の整備に向けた検討について」資料7, 2025年10月15日)。

中長期取引市場の制度設計 — 先渡・|図4

この区別を実務に落とすと、次のようになる。ベースロード市場・先渡市場・先物による既存のヘッジは、今すぐ調達・販売戦略の検討対象にできる。一方、制度設計WGで議論されている中長期取引市場の拡充については、確定するまで投資判断や事業計画の前提に組み込むべきではない。確定版の制度設計が出てから前提を更新する、という構えが妥当である。

蓄電池・小売・発電から見た中長期の価格ヘッジ

中長期取引市場の整備は、立場によって意味合いが異なる。それぞれの視点で何が変わり得るかを整理する。

小売電気事業者にとっては、長期のリスクヘッジ手段としての中長期市場が整えば、調達戦略に影響し得る。スポット価格が急騰した局面でも、先渡・先物・ベースロードで一定量を固定しておけば、調達コストの振れ幅を抑えられる。中長期の固定手段が拡充されれば、調達ポートフォリオの組み方の選択肢が広がる。

発電事業者にとっては、中長期で価格を固定して販売する手段の拡充が検討されている。将来の電気を先渡・先物であらかじめ売っておくことで、販売価格の見通しを立てやすくなる。これは発電投資の回収見通しを安定させる方向に働く。

投資担当の視点では、中長期の価格固定手段が拡充されれば、収入の見通しやリスク評価の前提が変わり得る。価格をどこまで固定できるかは、案件のリスク・リターン評価に直接効いてくる論点である。

蓄電池(系統用蓄電池)の立場からは、中長期取引市場は直接の主戦場ではないものの、無関係ではない。蓄電池は本来、価格が安い時間帯に充電し高い時間帯に放電する裁定取引や、需給調整市場・容量市場での収益が中心である。ただし、卸電力価格の中長期的な水準やボラティリティ(変動の大きさ)は、これらの収益機会の前提を形づくる。中長期市場の整備によって価格形成の透明性や指標性が高まれば、蓄電池運用の前提となる価格見通しの確度も間接的に影響を受ける。需給調整市場や容量市場での蓄電池の収益機会については、当社の需給調整市場と蓄電池の解説記事もあわせて参照されたい。

流動性と価格指標 — 中長期市場の設計で繰り返し出る論点

中長期取引市場の設計を貫く共通の論点が、流動性と価格指標づくりである。

流動性とは、取引の活発さである。市場で取引が活発に行われていれば、売りたいとき・買いたいときに相手が見つかりやすく、適正な価格で約定できる。逆に取引が薄いと、価格が一部の取引で大きく動いてしまったり、そもそも約定できなかったりする。中長期取引市場が事業者の実用に耐えるヘッジ手段になるには、十分な流動性が不可欠である。

価格指標づくりも重要な論点である。先渡・先物の価格が広く参照される指標として機能すれば、事業者は将来価格の目安を得られ、契約交渉や投資判断の基準にできる。指標性のある価格が形成されることは、市場全体の透明性を高め、参加者を呼び込む好循環につながる。

これらの論点に対し、現物市場(先渡・ベースロード)と金融市場(先物)を整合的に設計すること、金融機関を含む多様な参加者が入りやすい環境を整えることが、検討会・ワーキンググループで継続的に議論されている。具体的な制度の形はまだ確定していないため、一次資料で議論の進展を追うのが実務上の構えとなる。

実務上の押さえどころ — 検討中の論点との向き合い方

本テーマは検討中・時期未定の論点を含むため、向き合い方には注意が要る。実務で押さえるべき点を整理する。

第一に、本項目の中核である中長期取引市場全体の整備は、検討中であり時期は未定である。具体的なスケジュールや制度の詳細は確定しておらず、制度設計ワーキンググループの一次資料で更新を追う必要がある。確定していない制度を前提に事業計画を固めるのは避けるべきである。

第二に、すでに運営中のベースロード市場・先渡市場・先物と、これから整備を議論する全体設計は段階が異なる。両者を混同せず分けて押さえることが、誤解を避ける鍵である。既存のヘッジ手段は今日から検討対象にできるが、拡充の議論は別物として扱う。

第三に、中長期の価格固定手段が拡充されれば、小売の調達・発電の販売・投資の収入見通しのいずれにも波及し得る。当社の卸電力市場(JEPX)関連の解説とあわせ、注視すべき論点として継続的にフォローすることを推奨する。蓄電池事業の収益機会の試算については、LehmanSoft 収益シミュレーターで自社案件の概算を確認できる。

中長期取引市場の制度設計 — 先渡・|図5

まとめ

中長期取引市場は、当日・前日のスポット中心では固定しにくい数か月から数年先の価格変動に対し、リスクヘッジの手段として市場機能を強めることを狙う論点である。ベースロード市場・先渡市場(JEPX運営)と電力先物(TOCOM・EEX等)はすでに動いている一方、これらを含む全体設計の拡充は資源エネルギー庁の制度設計ワーキンググループで審議中であり、時期は未定である。

実務で取るべきアクションは次の3点に集約される。

  1. すでに運営中のベースロード市場・先渡市場・先物と、これから整備を議論する全体設計を分けて押さえる。既存のヘッジは今日から検討対象にできるが、拡充の議論は別物として扱う。
  2. 制度設計ワーキンググループの検討状況を継続的にフォローする。具体的なスケジュールや制度の詳細は確定していないため、一次資料で更新を追う。
  3. 中長期の価格固定手段が拡充されれば、小売の調達・発電の販売・投資の収入見通しのいずれにも波及し得る論点として注視する。

蓄電池事業の収益機会を含めた検討にあたっては、LehmanSoft 収益シミュレーターで自社案件の概算を試算し、具体的な事業組成の相談はLehmanSoft 系統用蓄電池事業ページからお問い合わせいただきたい。

参考文献

  1. 経済産業省 制度設計ワーキンググループ「中長期取引市場の整備に向けた検討について」資料7(2025年10月15日)(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/system_design_wg/pdf/005_07_00.pdf)
  2. 資源エネルギー庁「ベースロード市場について」資料5(2024年9月27日)(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/096_05_00.pdf)
  3. 経済産業省「電力先物の活性化に向けた検討会 とりまとめ」(2024年4月)(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/electricity_futures/pdf/20240415_1.pdf)
  4. 資源エネルギー庁「電力も『先物取引』?!(中編)〜電力先物を活用した電力事業のリスクヘッジとは?」(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/electricity_futures_02.html)
  5. 資源エネルギー庁「エネルギー白書2025」第2部第6章第1節 電力システム改革の推進(https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2025/html/2-6-1.html)
  6. 日本卸電力取引所(JEPX)先渡市場(https://www.jepx.jp/electricpower/market-data/forward/)

本記事は2026年6月時点の公開情報に基づき作成された。制度・市場設計は予告なく変更される場合があるため、実投資判断にあたっては最新の一次情報および専門家への相談を推奨する。