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EV充放電のDRready化とは — 経済産業省勉強会の論点と将来の機器要件をアグリゲーター視点で読む

DRready Requirements for EV Chargers and Bidirectional Chargers: METI Study Group Issues and Future Device Requirements from an Aggregator's View

経済産業省のDRready勉強会で検討が続くEV充電器・充放電器のDRready化を、当社がアグリゲーター視点で整理。要件の3要素(通信接続・外部制御・セキュリティ)、第7回(2025/11/25)と国内現状資料(2026/3/19)、コンセント型・V2Hの機器現状、JC-STARの位置づけ、海外の

公開日: 2026/6/25更新日: 2026/6/25

CONTENTS

  1. この記事の要点
  2. 一文要約
  3. DRready化とは — 機器を「需給に応じて動かせる状態」にする考え方
  4. なぜ今EVの充放電制御が論点になるのか
  5. DRready要件の3要素 — 通信・外部制御・セキュリティ
  6. 機器の現状 — コンセント型・通信対応型・V2Hで差がある
  7. 制度化の検討状況 — どこまで決まり、どこが未確定か
  8. アグリゲーターから見た論点 — リソース拡大と機器要件の二方向
  9. 実務上の留意点 — 検討段階のテーマをどう扱うか
  10. まとめ
  11. 参考文献
  12. よくある質問

この記事の要点

  • 経済産業省のDRready勉強会で、EV充電器・充放電器を需給に応じて制御できる状態(DRready)にする要件と制度化が検討されている。第7回は2025年11月25日、第8回(2026年3月19日開催)では国内の現状を整理した資料が提示された。
  • DRready要件はこれまで「通信接続機能・外部制御機能・セキュリティ要件」の3要素で整理されてきた。EV充電器・充放電器も同じ枠組みで議論が進む見込みである。
  • コンセント型充電器は通信機能を持たないため遠隔制御ができず、外付けIoTモジュールでの対応が現状の選択肢となる。V2H機器はクラウド接続とAPI連携でアグリゲーター制御が可能とされる。
  • 英国・南オーストラリア州など、EV充電器のスマート充電を義務化した国の動向が参照されている。日本の要件がどこへ収れんするかは審議中で確定していない。
  • 確定した制度ではないため、計画の前提に置かず、機器調達時の将来リスク・変数として織り込むのが実務上の扱いとなる。

一文要約

経済産業省のDRready勉強会では、EV充電器・充放電器を需給に応じて制御できる状態(DRready)にするための要件と制度化が検討されている。第7回勉強会は2025年11月25日に開催され、諸外国の制度状況が整理された(出典: 経済産業省 DRready勉強会)。第8回(2026年3月19日開催)では、メーカー目線で国内の現状を整理した資料が提示され、コンセント型充電器が通信機能を持たない現実やV2H機器の制御方式が示された。豪州など先行して義務化に動いた国の動向も参照しながら議論が続くが、要件の具体や制度化時期はまだ審議中で確定していない。本記事は当社が一次資料にもとづき、アグリゲーター視点で論点と将来の機器要件を整理する解説である。

DRready化とは — 機器を「需給に応じて動かせる状態」にする考え方

DRready化とは、家庭用蓄電池やヒートポンプ給湯機、EV充電器・充放電器といった需要側の機器を、デマンドレスポンス(DR、需給に応じた需要の調整)に対応できる状態にしておくという考え方である。電力が余る時間帯に充電を寄せ、足りない時間帯に充電を控えたり放電したりする。こうした制御を機器が受け付けられるよう、あらかじめ機能を備えておく状態を指す。

経済産業省はこの考え方を機器ごとに具体化するため、DRready勉強会を設けて検討を進めている。同勉強会ではこれまで、ヒートポンプ給湯機や家庭用蓄電池についてDRready要件が整理されてきた。要件はおおむね「通信接続機能」「外部制御機能」「セキュリティ要件」の3要素で構成され、海外の標準も参照しながら、国内独自仕様によるメーカーのコスト増を避ける方向で議論されている(出典: 経済産業省 DRready勉強会)。EV充電器・充放電器は、この3要素の枠組みを引き継ぐ形で議論が進む対象に位置づけられている。

押さえておきたいのは、本テーマが確定した制度ではなく検討段階にあるという点である。義務化の有無・時期・対象範囲はいずれも審議中であり、事業計画の確定事項としてではなく将来の変数として扱うのが正確な姿勢となる。

なぜ今EVの充放電制御が論点になるのか

EVの普及が進むと、電力需給の両面に影響が及ぶ。一方では、夜間や帰宅後の時間帯に充電が一斉に重なると、その時間帯の需要が膨らむ。他方では、充放電のタイミングを制御できれば、電力が余る時間帯に充電を寄せ、足りない時間帯に放電を引き出すという形で、需給調整の資源として使える可能性が大きくなる。

つまりEVは、放置すれば需要のピークを押し上げる負荷である一方、制御できれば需給調整の担い手にもなりうる二面性を持つ。経済産業省がDRready化を検討する背景には、この二面性を見据え、普及初期のうちから機器を「制御できる状態」にしておきたいという狙いがある。後から制御機能を求めても、既に普及した機器が対応していなければ調整資源として束ねられないためである。

太陽光の余剰と充電シフトの関係

国内では昼間に太陽光発電の出力が大きくなり、需要に対して供給が上回る局面が増えている。再生可能エネルギーの出力制御(発電を一時的に絞る措置)も各エリアで発生している。こうした昼間の余剰を、EVの充電を昼間に寄せる「充電シフト」で吸収できれば、出力制御の緩和と需給調整の双方に資する。EVの充放電制御は、こうした国内の需給構造の変化と結びついた論点として浮上している。

海外で義務化が先行している

第7回DRready勉強会(2025年11月25日)では、諸外国におけるEV充電・充放電のDRに関する制度の検討状況が整理された。英国や南オーストラリア州などでは、EV充電器のスマート充電機能(需給に応じて充電を調整する機能)を義務化する規制が先行している。EUでも公共充電に対する要件の議論が進む。日本の検討は、こうした先行国の制度を参考材料としながら進められている(出典: 経済産業省 DRready勉強会 第7回 資料7)。

EV充放電のDRready化とは —|図1

DRready要件の3要素 — 通信・外部制御・セキュリティ

DRready勉強会でこれまで整理されてきた要件は、機器の種類が変わっても共通する3つの軸で捉えられる。EV充電器・充放電器の議論も、この枠組みを土台にすると理解しやすい。

第一に通信接続機能である。機器が外部の制御主体(アグリゲーターなど)と通信し、指令を受け取れる状態を指す。通信の経路や方式が標準化されていなければ、多数の機器を束ねて一斉に制御することは難しい。第二に外部制御機能である。受け取った指令に従って、充電の開始・停止や出力の調整を実際に実行できる機能を指す。第三にセキュリティ要件である。外部から制御を受け付けるということは、不正なアクセスや誤指令のリスクを伴う。これを防ぐための認証・暗号化などの備えが求められる。

EV充電器・充放電器に固有の事情として、対象が充電器・充放電器だけにとどまらない点がある。第8回勉強会(2026年3月19日開催)で提示された資料では、EVの充放電DRには充電器・充放電器に加えて、車両側や充電サービス事業者も関わることが指摘されている。給湯機や定置型蓄電池と異なり、制御の対象が機器・車両・サービスの三者にまたがるため、要件の設計はより複雑になる(出典: 経済産業省 DRready勉強会 国内の現状資料 2026年3月19日)。

機器の現状 — コンセント型・通信対応型・V2Hで差がある

2026年3月19日に公表された「EV充電・充放電のDR 国内の現状(充電器・充放電器メーカー目線)」は、メーカーへのヒアリングをもとに国内機器の現状と課題を整理した資料である。ここから、機器の種類によって制御の可否に大きな差があることが分かる。

コンセント型の充電器は、そもそも通信機能を備えていないため、遠隔制御によるDRを実装できない。対応策としては、外付けのIoTモジュールを設置して電源スイッチの入切を制御する方式が示されている。一部のメーカーは、こうしたIoTモジュールや、電気料金の安い時間帯に充電を寄せる経済的DRの仕組みでDRに対応している。一方、V2H機器(EVから家庭へ給電できる充放電器)は、クラウド接続とアグリゲーターとのAPI連携を通じて、遠隔での充放電制御を実現できるとされる。ただし、これらの実現可能性と課題は機器・メーカーによって幅がある(出典: 経済産業省 DRready勉強会 国内の現状資料 2026年3月19日)。

EV充放電のDRready化とは —|図2

この現状が示すのは、将来DRready要件が課されても、既存ストックの機器がそのまま対応できるとは限らないという事実である。とりわけ通信機能を持たない機器は、外付けの仕組みや更新による対応が必要になりうる。機器調達の判断で将来の要件への対応余地を見ておく意味はここにある。

制度化の検討状況 — どこまで決まり、どこが未確定か

本テーマで最も重要なのは、何が確定していて何が未確定かを正確に区別することである。確定しているのは、経済産業省がDRready勉強会という場でEV充電器・充放電器のDRready化を継続的に検討しているという事実と、勉強会で公開された資料の内容そのものである。第7回が2025年11月25日に開催され、第8回(2026年3月19日開催)で国内現状資料が提示されたという経緯は、いずれも一次資料で確認できる。

一方、未確定なのは、要件の具体的な水準、義務化の有無、対象機器の範囲、そして制度化の時期である。これらはいずれも勉強会で議論が続いている段階にあり、確定した制度として発表されたものではない。海外で義務化が先行しているからといって、日本が同じ形に収れんすると断定することはできない。

EV充放電のDRready化とは —|図3

この線引きを誤ると、まだ決まっていない要件を前提に機器を選定したり、逆に検討動向を軽視して将来の対応余地を残さなかったりという判断ミスにつながる。確定事項として扱えるのは公表資料の内容まで、それ以外は変数として扱う、という整理が実務上は安全である。

認証制度との接点 — JC-STARの位置づけ

セキュリティ要件に関連して、IoT製品のセキュリティ要件適合評価・ラベリング制度であるJC-STARが参考として挙がることがある。JC-STARは情報処理推進機構(IPA)が運用するIoT製品向けの任意のラベリング制度で、2025年3月から運用が始まった。製品共通の最低基準(★1)から、製品類型ごとの基準(★2〜★4)まで複数の適合レベルが設けられている(出典: 経済産業省 JC-STAR運用開始プレスリリース)。

ただし、EV充電器・充放電器のDRready要件としてJC-STARの取得が求められると確定したわけではない。あくまでセキュリティ要件を考えるうえでの参照点の一つであり、要件への組み込みは今後の議論次第である。機器調達の際に、こうした認証への対応可否を選定の判断材料の一つに加えておく、という程度に位置づけるのが現時点では妥当である。

アグリゲーターから見た論点 — リソース拡大と機器要件の二方向

EV充放電のDRready化は、アグリゲーターにとって二つの方向から影響する。

第一に、束ねられるリソースの拡大という機会の側面である。EVや充放電器がDRに対応すれば、これらを調整力やDRリソースとして束ねる対象が広がりうる。定置型の蓄電池に加え、走行と充放電を兼ねるEVが資源として加わることは、ポートフォリオの厚みにつながる可能性がある。需要側リソースを束ねるエネルギーリソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)の枠組みの中で、EVは将来の重要な構成要素になりうる。

第二に、機器要件への対応という条件の側面である。DRready要件や認証への対応が、将来の機器の販売・連系の条件に関わる可能性がある。アグリゲーターが制御できる前提で機器が普及するかどうかは、束ねられるリソースの量と質を左右する。通信方式やAPIの標準化がどう決まるかは、制御システムの設計にも影響する。

EV充放電のDRready化とは —|図4

ただし、いずれの側面も制度が確定していない以上、現時点では事業計画の確定的な前提に組み込むことはできない。機会としては視野に入れつつ、要件としては将来のリスク・変数として管理する、という二段構えが現実的である。当社は需給調整市場・EPRX参入支援を含むアグリゲーション業務を提供しており、こうした検討中の制度動向についても一次資料にもとづき継続的に整理している。

実務上の留意点 — 検討段階のテーマをどう扱うか

検討段階にある制度テーマを実務でどう扱うか、要点を整理する。

第一に、現時点では確定した制度ではないため、計画の前提に組み込むのではなく、リスク・変数として扱うことである。要件が確定するまでは、それを前提とした投資判断は避ける。第二に、DRready勉強会の議事・資料を起点に、要件の方向性を一次情報で追うことである。第7回(2025年11月25日)と第8回(2026年3月19日開催)で提示された国内現状資料は、いずれも経済産業省のサイトで公開されている。二次的な解説ではなく、原資料で確認する習慣が、検討段階のテーマでは特に重要になる。

第三に、EV充放電設備を調達する際は、将来のDRready要件や認証への対応を選定の判断材料に加えておくことである。通信機能の有無、外付けモジュールでの対応余地、API連携の可否などは、後から要件が課された場合の対応コストを左右する。第四に、豪州・英国など義務化が先行する国の動向と国内の議論を見比べ、国内要件がどこへ向かいそうかを継続して追うことである。先行国の制度は日本の検討の参考材料であり、方向性を読む手がかりになる。

EV充放電のDRready化とは —|図5

まとめ

EV充放電のDRready化は、経済産業省のDRready勉強会で検討が続く、確定前のテーマである。重要なのは、公表資料の内容は確定事項として扱える一方、要件の具体・義務化の有無・制度化の時期はいずれも未確定だという線引きを保つことである。

実務として押さえるべきは次の3点に集約される。

  1. 確定した制度ではないため、計画の前提に組み込まず、リスク・変数として扱う。DRready勉強会の議事・資料(第7回2025年11月25日、第8回2026年3月19日開催で提示された国内現状資料)を一次情報で追う。
  2. EV充放電設備を調達する際は、通信機能の有無・外付けモジュールでの対応余地・API連携の可否など、将来のDRready要件や認証への対応を選定の判断材料に加えておく。
  3. 豪州・英国など義務化が先行する国の動向と国内の議論を見比べ、国内要件がどこへ向かいそうかを継続して追う。

需給調整市場やEPRXへの参入を視野に入れる事業者は、こうした検討中の制度がリソース拡大の機会と機器要件の条件の両面で関わることを念頭に、動向を継続的に追っておくことが望ましい。需給調整市場での蓄電池の収益見込みを試算したい場合は、LehmanSoft 収益シミュレーターで自社案件の概算を確認できる。具体的なアグリゲーション事業の相談は、LehmanSoft アグリゲーション業務ページからお問い合わせいただきたい。あわせて、需要側リソースを束ねる事業の全体像は当ナレッジベースの蓄電池アグリゲーターとは、需給調整市場の制度面は需給調整市場とはもあわせて参照されたい。

参考文献

  1. 経済産業省 DRready勉強会(第7回、2025年11月25日)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/dr_ready/007.html)
  2. 経済産業省 DRready勉強会 第7回 資料7「諸外国におけるEV充電・充放電のDRに関する制度の検討状況」(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/dr_ready/pdf/007_07_00.pdf)
  3. 経済産業省 DRready勉強会「EV充電・充放電のDR 国内の現状(充電器・充放電器メーカー目線)」(2026年3月19日)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/dr_ready/pdf/008_07_00.pdf)
  4. 経済産業省 DRready勉強会(一覧)(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/dr_ready/index.html)
  5. 経済産業省「IoT製品に対するセキュリティラベリング制度(JC-STAR)の運用を開始しました」(https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250325007/20250325007.html)

本記事は2026年6月24日時点の公開情報に基づき作成された。本テーマは経済産業省DRready勉強会で検討が続く審議中の事項であり、要件・制度化時期は確定していない。制度は予告なく変更される場合があるため、実務判断にあたっては最新の一次情報および専門家への相談を推奨する。

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